杜の中の閑話室

神社を求め、ただ一人。山へ海へ里を歩く紀行譚!

【香川】村社「木烏神社」の見どころ

f:id:horo1332:20190323182415j:plain【2019年1月27日(日)奉拝】
香川県丸亀市本島町に鎮座する「木烏神社(こがらすじんじゃ)」は、瀬戸内海に浮かぶ本島にある神社です。当社は日本武尊(やまとたけるのみこと)の水先案内を行ったカラスが帰った場所と伝わっています。

境内には、江戸期の「制札場」や珍しい鳥居のほか芝居小屋があり、本島のコミュニティ広場としても利用されています。

 

 

 

アクセス

フェリー

・丸亀港から船で35分。本島港から徒歩約5分。

 (料金は大人片道550円、往復1,050円)
 

 

乗船案内や時刻表などはこちら↓

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見どころ

木烏神社の見どころ、5箇所あります。

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 ⑴木烏神社鳥居

 ⑵制札場(せいさつば)

 ⑶千歳座(ちとせざ)

 狛犬

 ⑸年寄宮本家の墓(国指定史跡)

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 ⑴「木烏神社鳥居」 九州の肥前鳥居

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社頭の鳥居は、木烏神社で最も大きな見どころです。
この鳥居の建築様式は「肥前鳥居(ひぜんとりい)」といい、佐賀の肥前地方を中心に見られます。肥前鳥居は、上部の「島木」と「笠木」が細いにもかかわらず、柱が異様に太く、木鼻は丸みのある反りを持たせているのが特徴的です。

筥崎宮」(福岡県福岡市)の鳥居はその代表格で、その特異な様式から大陸の影響を受けたのではないかと思案するほどです。

 

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さて、木烏神社は「筥崎宮」の柱ほど太くありませんが、笠木の鼻先を蕨手(わらびて)にくるりと刻んでいるところは本場にも見られない珍しい例です。これを受けて、市の指定文化財に指定されています。

 

 ⑵「制札場(せいさつば)」 御触書を掲示した場所

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(出典:「まるがめせとうち島旅ノート」より)
江戸時代に塩飽勤番所から、人々に周知する触れ書(ふれがき)や掟書(おきてがき)などを掲示していた場所です。塩飽諸島には24の制札場がありましたが、現在は塩飽全体で3ヶ所しかなく、本島ではこの建物のみ遺されています。

 

 ⑶「千歳座(ちとせざ)」 秘密の芝居小屋

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境内にある建物は、文久2(1862)年に建てられた芝居小屋で、「千歳座」という呼び名で親しまれています。一見するととても芝居小屋には見えない建物ですが、正面の板戸を開き、下のぶちょうを前に倒すと、間口6間(約12メートル)の舞台ができます。内部に回り舞台、ぶどう棚、ちょぼ床等を備えた本格的な芝居小屋であり、全国的にも数が少ないことから市の指定文化財となっています。

 

f:id:horo1332:20190323205825j:plainこの建物が芝居小屋に見えないのには訳があります。
実は幕府からの芝居小屋の禁制を逃れるため、あえて芝居小屋らしからぬ建物を建てたのです。名目上は神社の道具納屋として、だったとか。

 

f:id:horo1332:20190324220859j:plain(出典:「まるがめせとうち島旅ノート」より)

公演数はめっきり減りましたが、今でも演奏会などで使われることがあります。
何だか風情がありますね。

 

 ⑷境内社狛犬」 嗤う狛犬

f:id:horo1332:20190323210703j:plain木烏神社の拝殿横には「嗤う狛犬」がいます。
あえて「嗤う(わらう)」という表記にしたのは、ただならぬ妙にニヤついて見えたからです。

左手狛犬の口角がやけに上がっているので、無意識に阿形(あぎょう)と見ていましたが、普通阿吽で一対をなす場合、右手に阿形、左手に吽形が配置されるはずです。そう思って改めて確認して見ますと、やはりそうでしたね。

…って何ですかコイツは!

 

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前足がかなりデフォルメ、いやテキトーに作られていて、かえって修繕は簡単なので幾らか恩恵を受けているように思います(嗤)。

このような狛犬を見ると、もう少しきちんと保存・保管して欲しいと勝手に意見する自分がいますが、悲しいかな、やはり学術上認められるところがない限り難しいというのが世の常なんですね。

  

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 ⑸「年寄(としより)宮本家の墓」 国指定史跡 

f:id:horo1332:20190323214627j:plain木烏神社から徒歩5分程のところにある「年寄宮本家の墓」は、塩飽の豪族であり、かつ水軍として海外でも活躍した宮本家歴代の墓です。大きな墓石は板碑型とでも呼ぶのでしょうか。最も大きなもので、高さは340センチあります。

 

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左から3番目の墓は、木烏神社の鳥居を寄進した第二代吉田半右衛門の墓で、寛永4(1627)年に建てられました。

木烏神社を参拝して  

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                  (丸亀本島間を結ぶフェリー)
以前から気になっていた本島へようやく行けました。
九州の肥前鳥居が瀬戸内で拝めるとは、まったく驚きです。笠木の木鼻は普通斜めに鋭くカットされるのですが、当社の鳥居は蕨手の加工と共に緩やかに上に反っています。香川県の鳥居は明神鳥居が一般的なだけに、木烏神社の鳥居は異国情緒を感じるものでした。

 

f:id:horo1332:20190325212956j:plain             (石灯籠の火袋から鳥居を望む)

さて、宮本家累代の墓所には鳥居を寄進した第二代吉田半右衛門の墓もあり、当初の計画通りカメラに収めることができました。また特に愉快だったのが端の方にある「五輪塔(ごりんとう)」です。霊園にある最近の五輪塔はツルピカに研磨された味気ないものですが、宮本家の五輪塔は近世ですから、もちろん研磨されていません。

 

f:id:horo1332:20190325212852j:plain            (上部が大きいアンバランスな五輪塔

雨風による風化も激しく、妙に味わいがある五輪塔にしばしうっとり眺めていました。そして、いつか五輪塔めぐりをしても面白いのではと考えるようになりました。

今気になっているのは、「石清水八幡宮」(京都府八幡市)にある日本最大級の五輪塔です。その高さは約6メートルあります。宮本家の五輪塔が約3.3メートルですから、その倍近くありますね。

いつか行ってみたいものです。