杜の中の閑話室

神社を求め、ただ一人。山へ海へ里を歩く紀行譚!

岩手ひとり旅vol.4 奥州市「駒形神社」

遠野に別れを告げたはずなのに、まさかこんな形でご縁があろうとは。

…というと大袈裟なのだが、私はこの岩手旅を2部作のように、初日を遠野「早池峯(はやちね)神社」「荒神(あらがみ)神社」「六神石(ろっこうし)神社」、二日目に陸中国一宮「駒形神社」と予定していた。このように初日と切り離した旅だったのに、二日目の駒形神社で遠野ゆかりの由緒と出会すことになる。それは駒形神社の境内にある「塩釜神社」に奉納された「四つの御釜」である。

 

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塩炊き釜

そのお釜は、今から300年ほど前、大船渡で栄えた稲子沢家(いなこさわけ)の末裔が奉納した物である。稲子沢家は財宝を7つの御釜に入れ埋蔵したのだが、その7つの内の4つをこの家の末裔が掘り起こし、塩釜神社へ奉納したというのだ。奉納先が本家本元の鹽竈神社ではなく当社なのは近所ゆえとも諸説あるが、個人的に驚いたのがそもそもこの家の栄えた理由が、遠野地方の富豪家から去った座敷わらしだということ。まさか遠野から離れた直後に、遠野の座敷わらしの話を聞くとは。今回の訪問先である駒形神社及び塩釜神社の由緒など、まったくと言っていいほど下調べしていなかったというに、何の因果かここに来て再びご縁を頂いたような気がした。そういえば、早池峯神社の座敷わらし祈願祭が始まったきっかけは、座敷わらしが参拝者の家までついて来て、その家が繁栄したことに端を発するらしい。だから私にも参拝後について来てしまったのかもしれない…。というのは冗談として、今回のように何気なく訪問した場所が他社と繋がるケースもあり面白い。

 

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駒形神社の境内

さて、駒形神社の境内は落ち着いてしんとした神気があるが、その一方で何かしら人の目線をも感じるようであまり居心地の良いとは言えなかった。もちろん私個人の感想だから、簡単に良し悪しを決めつけるものではないのだけれど。塀や建物で境内がしっかり区分けされていて、神職が境内を一望できる境内では、心静かにぼうっと景観を眺めることはできない。

 

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水盤も華やかに

境内には桜の木がたくさん植っており、春の例祭と合わせて多くの人が賑わう社である。環境のみならず、時期や天候など複数の条件が心情に及ぼす影響も大きいから、時季を変え、時間を変え、また訪問しても良いかと思う。