杜の中の閑話室

神社を求め、ただ一人。山へ海へ里を歩く紀行譚!

長野ひとり旅vol.2 上伊那郡辰野町「矢彦神社」

平田駅駅舎

平田駅を見ると、2年前の1月。寒さでブルブル震えながら列車に乗り込んだあの時を思い出す。あれは安曇沓掛(あずみくつかけ)、「仁科神明宮」を目指したときか。まだ夜の明けぬ暗がりの中駅舎に入り、プラットホームでコーンスープを手に身体を温めながら一番列車を待った。温暖な瀬戸内で育った私にとって、松本はなんて寒いのだろうと身に染みて感じたものだった。

 

神明形の大鳥居

今日は南へ、塩尻方面へ向かう。中央本線小野駅より徒歩10分程のところに「矢彦神社」なる信濃国二宮があり、天然記念物にも指定されている鎮守の森が見どころである。ただ、私が何を思ってこの社を選定したか、今となってはとんと思い出せぬ。しかし、入域後良い意味でこうも裏切られたのは、神社旅を満喫する私にとって嬉しいものであった。

 

壮大な神楽殿と巨木の一景

小野駅で落ちてきた雨粒は、鳥居を潜る頃には大きくなり、傘をささずには散策できぬほどの強雨となった。私は圧倒される神楽殿を数枚捕え、感傷に浸る間もなく舞台に腰掛けた。ふうと一息つくと、舞台で組まれた一枚一枚の材木の大きさや重みが手を伝い身に染み入るようだ。

 

「大正御即位奉祝献燈記念」云々・・

天を仰ぐと雨に煙る境内に仄かに灯る一灯が視界に入る。金の傘に打つ雨音や周囲の緑に心落ち着かせ、また小降りになると私は散策を再開した。

 

楽殿と同じく信濃国一宮「諏訪大社」を彷彿させる拝殿

さて、とにもかくにも御朱印である。昨日「塩野神社」へ訪問した際、当矢彦神社へ訪問と御朱印拝受の旨を電話で伝えていたのだ。ただ今までと違うのは、神職の方が私宛にわざわざご用意して下さったこと。これが殊更嬉しかった。

 

「先程お電話頂いた件でございますが、明日は祭典がありまして不在なのを忘れておりました。申し訳ございませんでした。もし宜ければ、拝殿に御朱印を置いておきますが、お名前を頂戴できますか」

 

ご親切に由緒書まで添えて、ありがたく頂戴した

かくかくしかじか、私は拝殿に向かいありがたく御朱印を手にできた訳である。

 

往古を伝える針葉樹と落葉広葉樹の混交林

さて、スマートフォンに入れた天気アプリもいい意味で裏切って、雨は小康状態。石畳や神楽殿の銅板葺はまだ艶やかに光り、新緑の葉っぱから滴る雨粒も落ち着いて、池の水面も平静である。

 

さあ次は「小野神社」だ!跨ぐぞ!

私は「矢彦神社」の社地を越境し、「小野神社」へ突入した。