杜の中の閑話室

神社を求め、ただ一人。山へ海へ里を歩く紀行譚!

兵庫ひとり旅vol.3 宍粟市「伊和神社」

終点の「山崎」バス停 ここからまた別のバスに乗車して「一の宮伊和神社前」へ向かう

兵庫はバスの旅と言っていい。

西脇市から「青玉神社」へ。姫路から「伊和神社」へ向かういずれの経路は、片道1時間以上もバスに揺られての訪問である。ことに伊和神社へは「姫路駅」から47駅を経由し、終点の「山崎」バス停へ到着後、30分の乗り換え待機を以って、「一の宮伊和神社前」まで21駅を経由した。レンタカーを使えば1時間も掛からぬ距離なのに、あえて時間の掛かるバスを選択するのが私の旅である。何度も言うように、欲しいものを簡単に手にしてしまっては面白味がない。思慮を尽くして、時間をかけて手にするからこそ旨味があると言うものだ。

 

伊和神社参道と本殿裏の鶴石

さて「伊和神社」は国道29号線(因幡街道)のほぼ中央に位置し、祀神・大己貴神(おおなむちのかみ)を以って祀られた社である。西暦144年創始と伝わる古い宮で、一夜のうちに杉桧が茂り、2羽の大きな鶴が石の上で眠ったという宮創始の磐座が本殿裏にある。

 

一宮の格を見せつける重々しい社殿

神域はとにかく広い。それゆえに社殿が小さく見えてしまう嫌いはあるが、近くまで寄ると一本一本の柱の太さや、本殿の屋根の大きさ、その重厚感たるやなかなかのものである。そしてその社殿を囲むよう木々は繁茂し、参道は清められ、何人たりとも受け入れてくれるような懐の広さすら感じられる。

 

楽殿でしめ縄を作る人々と裏参道の入口につけられたポンポン(筆者勝手に命名

私はそんな静かな境内を歩みて社の深部まで達した。神楽殿では氏子が藁を編んでおり、賑やかな笑い声すら聞こえてくる。「他の所は大体年末にしめ縄を作るのですが、うちでは10月に作っているんです」というのは神職の談。そして近くの国道沿いや社頭の瑞垣、裏参道にポンポンが付けられている事象については、10年前に地域の者が始めたことで、神社との謂れはないようだ。遠くから見ると生花のようなポンポンは、触ってみると幾つもの樹脂の紙片をラッパ状に曲げて作られている。たとえ雨が降ろうとも破れまい、そんなこんな思いながら私は花弁の感触を確かめるように触れるのであった。

 

社殿正面

兵庫に鎮座する一宮は「伊和神社」のほかに「伊弉諾神宮」「出石神社」「粟鹿神社」と4社もある。これらは公共交通機関を使って梯子するのはなかなか難儀なものだ。だから今旅では、せめて1社は行こうと半ばついでのような気持ちで参ったというに、こんな素晴らしい所があったと感激するほど良き神社であった。

 

そしてまたバスに乗る

心配していた雨にも降られることなく、私はまたバスに乗る。その後は山崎、姫路と三ノ宮まで行って、土産にゴーフルと炭酸せんべいを買った。兵庫は広く、美味しいものが多い。また行かねば。

 

三ノ宮から新宿へ向かうバスの中、私はまた次の旅程を練っている。