杜の中の閑話室

神社を求め、ただ一人。山へ海へ里を歩く紀行譚!

岡山ひとり旅vol.2 高梁市「高草八幡神社」

第2鳥居 鳥居と整備された参道がなければ、山そのもの

本山山神社から徒歩5分ほどのところに、同社の御神体を遷したという「高草八幡神社」がある。高梁から吹屋行きバスの終点となる駐車場の近くに鎮座しており、近年建てられた白い鳥居がその存在を知らせている。鳥居から先は鬱蒼たる杉林が広がり、山の中へ入っていく感覚そのものである。足元には朝露の湿った枯れ枝が幾つも落ちており、随身門に差し掛かる頃には参道を歩くというより、枯れ枝を踏んで参拝という印象。

拝殿

本山山神社の御神体は新たに社殿を設けた訳ではなく、高草八幡神社の本殿に遷座されたようだ。既に舟敷の「山神社」、中町の「恵比須神社」、下町の「秋葉神社」、下川の「稲荷神社」、大深の「荒神社」、長屋の「荒神社」も合祀している賑やかな社である。

各所より合祀された相殿

そういう背景があってか、飾り気のない田舎の拝殿にしては、割と大きな本殿が接続されている。地中から湧き出た水は水路をつくり、青銅灯籠と呼ばれる灯籠にはベンガラが塗られているのか、わずかに赤みを帯びている。神坐す神聖な所という意識より境内の管理が行き届かない印象を受けるが、田舎の小社ではごくありふれた景観である。境内社水分神社も銅山に縁のある社であるように、神社は鎮座地の産業と通じていることがあり、その土地のことを知りたくば、各地で最も有力な神社へ訪問するのも当地を知る手がかりになるだろう。

朝日を浴びる吹屋

さて、鳥居を出たら暫く待機だ。

ここまで吹屋の町並みや小学校、それに神社と思い思いに綴ってきたが、細かなところ吹屋弁柄の老舗「旧片山家住宅」や「吹屋ふるさと村郷土館」、町並みに点在するみやげ屋など、吹屋の魅力を挙げればキリがない。

初日、スープカレーの店「つくし」で「チキンカツスープカレー」(1,300円)を食した

個人的な旅を省みると、宿泊するコテージの受付場所が分からず、山へ登ったり下りたりと9月なのに大汗をかいて、ようやくコテージへ入ったと思いきや、玄関に巨大な節足動物がいて腰を抜かしたりと、まあ色々あったもんだ。ベンガラの原料となる緑礬(ローハ)の製造で巨大な富を得た広兼邸は、映画「八つ墓村」のロケ地であり、城郭のような石垣を見たかったのだが、レンタサイクル所が閉まっていた関係で訪問叶わず。他方東京にあるようなスープカレーの専門店があり、その意外性と美味しさに驚いた。(チキンカツが硬かったのは、鶏の部位の問題か?)

 

駐車場で今にも壊れそうな木のベンチに腰掛け水分補給をしていると、大道から颯爽とバスが現れ、バスもまた出発までの一息である。暫くして私はバス停へと移動した。鳥居を出てバス停まで物思いに耽ったあの30分程の時間に人の姿はまったくなく、耳を澄ましても、時たま格子戸がコトリと音を立てるぐらい。本に静かな吹屋の町で、私はバスが来るのを静かに待った。

 

 

9月24日、朝7時15分、そこにようやくである。