杜の中の閑話室

神社を求め、ただ一人。山へ海へ里を歩く紀行譚!

富山ひとり旅vol.2 中新川郡立山町「雄山神社前立社壇」

雄山神社前立社壇 社殿

岩峅寺(いわくらじ)駅から徒歩10分ほどの所に「雄山神社前立社壇(まえたてしゃだん)」がある。ここも中宮や下宮を用いず「前立社壇」という名称がただならぬ感を匂わしている。ちなみに前立社壇とは、「一番手前に建立していて祭礼を行う場所(祭壇)」という意味である。その名の通り、頂上の「峰本社」と中宮の「祈願殿」、そして「前立社壇」の3社の内、ここ前立が最も平野に近く比較的参拝しやすい場所に鎮座している。

 

本殿

そんな当社には、天正11(1583)年、越中国の武将佐々成政公(ささなりまさ)が造営改修したと伝わる本殿がある。間口5間(約9メートル)の流造は北陸最大の本殿だが、後年の社地整備で本殿以上の壮大な拝殿を建てたために本殿の姿が見辛くなってしまったというのは正殿を好む私にとっては寂しい限り。

 

雄山神社参道 白山比咩神社と雰囲気が似ている

祈願殿からバスと電車を利用したので割と時間を確保できたが、本殿を観察できぬ上に特に琴線に触れるものもなかったので私にとっては珍しく正味30分ほどで当社を後にした。皇紀2600年、今から80年ほど前に整備されたこの景観は、おそらく当時と大差なく、拝殿前の空間も車が参入できるほどの大きなスペースを有しており、私は一目見て以前訪問した「白山比咩神社」をすぐに思い出した。前立も白山比咩と同じで七五三の時季など、多くの参拝客が訪れるであろう。

 

常願寺川に掛かる立山橋と富山地方鉄道のトラス橋

御朱印を頂けば、あとは昼食をとって福井へ向かうまで。その昼食もまだちと早い。

私は前立社壇の前を流れる常願寺川の川辺に腰掛け、忘れじと先に訪問した祈願殿での神主とのやり取りを帳面に書き残した。風が心地よく、ただぼうと景色を眺めていても日焼けするような強い陽射はまだない。爽快な青空をバックに残雪を纏う雄々しき山容が、我が故郷瀬戸内には見ぬ雄大な景観であった。幾らか腹も減ったので近くの定食屋でカツ丼を口にし、私は明日に備え目的の場所に近しき福井で宿に入った。

 

定食屋「よしろく」で食したカツ丼と旅の終着となった福井

ただ当時は神社の他にある活動も行っておったので経済的ゆとりがなく、社のお膝元まで来たにも関わらず、結局訪問を断念せざるを得なかった。因みに訪問予定の社とは、苔で名高い「平泉寺白山神社」である。

 

いつか行かねばならぬ。

 

私は後ろ髪を引かれつつ特急へ乗り込み、福井を後にした。