杜の中の閑話室

神社を求め、ただ一人。山へ海へ里を歩く紀行譚!

新潟ひとり旅vol.1 弥彦村「彌彦神社」

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新潟の南を過ぎゆく台風14号

温帯低気圧に変わって西日本に接近するという予報だった台風14号が、再発達し新潟方面へ向かう可能性が出てきた。なんとまあ上手い具合に三連休に。しかも日本海コースとは、と落胆したものの次第に西日本から東日本を横断するコースへと流れを変え、しまいには東海・関東方面へ南寄りを進んだために、新潟への影響はほとんどなかった。ただ日本海で発生した低気圧の影響を受け、私にとっては3月に訪問した「南宮大社」以来雨中の参拝となった。

 

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彌彦神社 社頭

昭和・平成と市町村合併が行われてきた昨今に村名(弥彦村)とは、どこか懐かしく古風な印象を受ける一方で、社殿は大正5(1916)年建立と比較的新しく、また壮大かつ端正な出で立ちである。森厳な自然と社殿の古朴さを好む私にとっては本意ではないが、そこは初の新潟探訪への期待と近代の名建築家・伊東忠太博士による設計ということで多少なり興味関心を持って足を踏み入れた。

 

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社殿を正面から望む

随神門からの眺めは特に美しく、阻害することのない広い空間の中にあるシンメトリーな社殿は、まさに容姿端麗である。近代の神社建築における制限のもとで簡素にしつらい、近世までのうるさい装飾などは一切ない。ともすれば寂しさをも付き纏う懸念があるが、例えば紀州「竈山神社」のような陰湿な雰囲気はここにはなく、明るく開放的な空間となっている。朝の清掃がよく行き届いており、回廊の蜘蛛の巣まで丹念に払う神職の姿に洗心すら覚える。

 

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社殿を斜めから拝す

私は社殿を正面から撮影した後、休憩がてら回廊のベンチに腰掛け、雨が小降りになるのを待った。斜めから見ても相変わらず美しい姿をしている。私は今日初めて彌彦を訪れたから初詣やお祭りの様相は知らないけれど、初詣だけで毎年20万人以上が訪れ、年間でも約140万人もの参詣者がいることを考えれば、この社殿前の広さは納得である。雨はザーッザーッ音を立て、傘をさしていても足元が濡れてしまうほどの強雨である。銅板屋根は艶やかに光り、流れるように落ちていく。ふりしきる雨の中にも関わらずちらほら先客がいる。

 

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奉献酒とシックな鼓楼

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参拝者休憩所の照明にうっとり

授与所の営業開始は朝8時30分からなので、改めて社殿を撮影したり、奉納された酒樽に回廊、立派な社務所や鼓楼、境内社を拝見した。緑豊かな広い境内には、鶏舎や鹿苑、宝物殿など見どころが多く、周囲の公園も自由闊達に逍遥できよう。新潟の観光スポットとして上位に挙げられる理由も納得である。

 

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雨に濡れる参詣路

さて、無事御朱印を頂いた後は次なる訪問地を目指すことにする。

別段強いこだわりを持って訪れたわけではないけれど、本を読んだだけでは感じ得ない木の芳香や川のせせらぎなどとても気持ちの良い参拝だった。願わくば上越新幹線開通記念に建立されたという大鳥居を拝見したかったけれど、鉄道のダイヤが悪いうえ、周辺に手頃な飲食店も無く、次の列車までの時間潰しができないならばと今回は断念した。天候不順から弥彦山への登拝もできず、ロープウェーも本日運休の札が掛けられていた。それでももう十分過ぎるくらい彌彦を堪能したわけだから、わざわざ天に背いて決行するまでもない。

いつしか雨も弱まり、黒々とした日本海も淡い色を取り戻している。

 

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特急しらゆき4号 上越妙高行き

列車は南進、南進…。

12時10分、今直江津に着いたところである。