杜の中の閑話室

神社を求め、ただ一人。山へ海へ里を歩く紀行譚!

新潟ひとり旅vol.2 上越市「居多神社」

どす黒いスープに度肝を抜かれた。

その名も「上越ブラック」!

少しお洒落感を出すならば、「上越ブラック(Joetsu Black)」と表記してもいい。

とかく只物ではない妖気に釣られ頼んでしまったブラックだったが、先にも書いたようにスープは黒々としていて見慣れぬ様相をしている。しかも、味噌か醤油かとんこつか塩かの味の選別もままならず、ただただ舌の上がチリチリと痺れるばかりである。うどん県で育った私にとってはあまりに刺激的で、これはまさに罪である。責任者は誰か。味の良し悪しを下すジャッジすら難しい食物である。

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ミシュランガイド新潟2020」に選ばれたお洒落なラーメン店【坂本02】と「上越ブラック」

今更ながら、私が食べたのはラーメンである。たかがラーメン、されどラーメンか。ラーメンと神社なんて比較対象が間違っているけれど、あまりにもこの食べ物が刺激的で目的の居多神社が霞んでしまうじゃないか。あまり心が満たされると参拝の途中でも帰路に着くよう私の足は仕込まれているゆえ、精神的刺激快感を満たしてはならないにも関わらず、ああまたまたすすってしまった。

 

そういえば、東京にもカラシビ(辛痺)ラーメンというのがあって以前職場の先輩と食べたことがあったけど、いやもうそれはよしにしよう。

 

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新しき居多神社社殿

さてさて、この社、もとは身輪山に鎮座していたそうであるが、慶應2(1866)年海蝕により崩落したため現在地へ遷座したそうな。それにしても社殿が新しいのが気にくわぬ、なんて感情的に批判せず、私は崩落後どのような経緯で建立され、今日に至るのかが興味ある。

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社殿から境内を振り返る

それと一宮ならぬ小規模な社殿と素朴な参詣路。悪くいえば田舎ではありきたりの神社で、なんの変哲もないお宮である。あらかじめ情報収集して社殿の姿は知っていたから、かくも驚きもせず、そして何も求めるものはない。それぐらい素朴な神社なのだが、それゆえ私がまだ「神社めぐり」と称して広島の田舎路を走り回っていた頃の小社に雰囲気が似ており、どことなく愛着を感じ得ずにはいられなかった。型を抜いて作ったような量産型の狛犬にコンクリート製の階段と参詣路。社号標も最近新調したような新しさが見て取れる。駐車場の広さには、違を唱えぬ者など居るまいと、一宮らしい広大な駐車スペースを備えている。

 

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私は拝殿・幣殿・本殿までの社殿群をぐるりと周回できることに珍しさを感じながらカメラを構えた。ぱらぱらと小雨の降る中、新しい木造建築と足下の緑のコントラストが美しく、書で見るよりずっとフォトジェニックな景観である。純粋な子どもでも走り回りたくなるような開放的な境内に拒むものは何も無く、閉ざすことのない野の原に、気持ちも思わず明るくなりそうだ。

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社務所にて、書き置きの御朱印があるはずだが…

一宮ではレアケースな御朱印を拝受できない珍事が発生するも、少し前向きに捉える自分がいる。心のどこかには、「一宮なのだからもう少し余分に書き置きを準備しておいてもらいたい」という気持ちもあるにはある。けれども私はもう一社、佐渡国の一宮へ行かねばならぬ用事があるから、その時にまたお邪魔して御朱印を頂こうと思う。なるたけ一回の旅路に一県を想定して、佐渡の「渡津神社」と合わせて大掛かりな計画を立てても面白かろう。その暁には、元社地だった身輪山周辺を是非ともカメラに納めたいものだ。

 

9月とはいえ、はやセミの声はなく、秋の虫がやや寂しげに聞こえてくる。

彌彦神社から居多神社まで、既に2日ぐらいは経っているのではないかと感ずるほどに、ゆっくりと時は歩み、時計の針は何度見ても14時である。朝4時起床というのも起因するだろうが、それにしても有意義な時間がゆったりと流れている。

 

私は少し早めの休息として快活CLUBへ向かい寝床についた。ある意味、このひと時が至福の時間である。仕事なんて気にもならず、私の身体を縛る時間なんてものは存在しないのだから。それもこれも、金銭的且つ精神的余裕からくる恩恵だろう。

 

明日は晴れるだろうか。

新潟を更に南下しよう。